トップ 遺言のよくある質問/疑問
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Q1.
自筆証書遺言を書きたいと思います。注意することはありますか? 自筆証書遺言は、全文、日付、氏名を自書し、押印すれば完成ですが、遺言がご自分の思うとおり執行されるには様々な点に注意が必要です。ここでは、遺言を書くにあたっての一般的な手順と注意点を述べておきます。 【解説】 1.手順 ・ 財産の一覧を作る ・ 誰に何を相続させるか等遺言の内容を十分に考えておく ・ 相続させるものや遺贈するものが不動産の場合は登記事項証明書(登記簿謄本)どおりに記載する ・ 預貯金等や有価証券等を相続させる場合は金融機関等の通帳や有価証券等の取引残高報告書などの財産の資料となるものを準備する ・ プラスの財産ばかりでなく、住宅ローンや借金などもリストアップする 上記について、よく検討し、漏れ等がないことを確かめ、遺言を書くことになります。 2.実際に書くにあたっての注意点 ・ 用紙は指定されていませんが、メモ等に間違われないような用紙を使う ・ 筆記具は改竄されたりすることがないよう、万年筆やボールペン等で書く ・ 冒頭は遺言である旨を明記する(「遺言書」「遺言状」など) ・ 遺言内容は、たとえば、 ○ 法定相続人の誰に何を相続させるのか ○ 法定相続人以外の人や団体等に財産を遺贈する場合は、特に遺留分の配慮を忘れないようにする 【具体例】 遺言者○○○○は、次のとおり遺言する。 1.遺言者は、長男○○太郎に遺言者所有の次の土地及び建物を相続させる。 1)土地 (不動産の記載は登記事項証明書のとおりに記載します) 所在 東京都世田谷区・・・・ 地番 11番1 地目 宅地 地積 ○○.○○平方メートル 2)建物 所在 東京都世田谷区・・・・11番地1 家屋番号 11番1 種類 居宅 構造 木造亜鉛メッキ鋼板葺2階建 床面積 1階 ○○.○○平方メートル 2階 ○○.○○平方メートル 2.遺言者は、△△△△に次の銀行預金の遺言者名義の預金の全てを遺贈する。 ○○銀行 ○○支店 ○○預金口座 口座番号 ×××× 3.本遺言の遺言執行者を次の者と指定する。(遺言を確実に実行するために、遺言執行者を指定しておきます) 住所 東京都世田谷区・・・・・・・・ 氏名 ○ ○ ○ ○ 平成23年1月1日 (日付は西暦又は元号を用いて具体的に書きます。○月吉日は×) 遺言者 ○○○○ 印 ・ 署名は、ペンネームや芸名、通称、雅号等でも有効ですが、戸籍上の氏名なら間違いありません。 ・ 印は、実印でなく、認め印や指印でも有効ですが、実印が望ましいでしょう。 ・ 印鑑証明書を添えておいてもかまいません。 ・ 遺言が一枚の用紙に書ききれず、複数枚に渡る場合はホチキス等で合綴して、契印をしておきましょう。 ・ 遺言書を封書に入れるかどうかは自由ですが、改竄のおそれ等もあるので封筒に入れたほうがよいでしょう。 ・ 更に封筒の表にも遺言書と書き、裏面にも日付や遺言者名を書いておきます。また、遺言者の死後、遺言書を開封せずに家庭裁判所の検認手続を受けるようにと記しておくのもよいと思います。 遺言は民法に定められた方式にしたがってなされていなければ無効になりますので、十分に注意して書きます。 Q2.
自筆証書遺言を書きました。保管する際に注意することはありますか? 遺言は、生前見つかっても困ることもあるし、死後に見つからないのでは遺言をする意味がないので、保管は最も気を使うところです。 遺言は、法定相続とは違う財産の分け方や第三者に遺贈する旨が書かれていることもあるので、相続人には受け入れがたい内容となる場合があります。そこで、遺言の保管は、封筒に入れて封印し、内容がわからないようにしておいた方が安心です。 また、保管する場所については、次のような場所が一般的ですが、注意点もあります。 1.信頼できる知人等に遺言の保管を頼む 遺言の保管を人に頼んだ場合は、自分の死を保管者に知らせる人を考えておく 2.自宅に保管する 土地の権利証や通帳などの貴重なものを保管する金庫に一緒に入れておくのが一般的ですが、自筆証書遺言は家庭裁判所の検認を受けなければ執行できないので「遺言書を開封せずに家庭裁判所の検認手続を受けるように」などと封書の裏面に記しておくのもよいでしょう。 Q3.
遺言をしたいと思いますが、公正証書遺言と自筆証書遺言のどちらにするか迷っています。 それぞれに特徴がありますので、特徴を理解して、どちらがよいか選択しましょう。 【それぞれの特徴】 自筆証書遺言は、字が書ければ、いつでもどこでも書くことができるし、費用もかかりません。その代わり、遺言の内容が曖昧だったり、不明確だとかえって相続人の間で争いになったり、記載に誤りがあった場合は訂正方法も難しく、また、方式を守らないと無効になります。遺言の保管にも注意が必要です。 公正証書遺言は作成に公証人が関与するため、方式違背や内容に疑義が生じることもなく、また遺言の原本が公証役場に保管されているため、紛失や変造されることもありません。費用はかかりますが、遺言を実現するには公正証書遺言の方が確実です。 公証人の手数料はこちらのサイトをご覧下さい → 日本公証人連合会ホームページ Q4.
病気を機に、遺言を書いておこうと思い立ちました。ただし、病後のため、思うように字が書けません。 一般的に、遺言を書く場合は次の3つがあり、その作成方法は次のとおりです。 1.自筆証書遺言 全文、日付、氏名を自書し、押印します。 2.公正証書遺言 遺言者が遺言の趣旨を公証人に口頭で伝え、公証人がそれを筆記し、その筆記したものを公証人が遺言者と証人に読み聞かせ、または閲覧させて、その筆記が正確であれば、遺言者と証人が署名、押印します。 3.秘密証書遺言 遺言書自体は自書でなくてもよく、パソコンやワープロで作成したものや代書でも可能です。遺言者の署名(これは必ず自署)と押印をして封筒に入れ、遺言書に押印した印と同じ印で封印し、公証人と証人の前に封書を提出します。公証人は遺言書を提出した日付および遺言者の申述(遺言書が自分のものであること)を封紙に記載し、遺言者、証人と共にこれに署名します。 したがって、思うように字が書けない場合でも、ご自分の署名さえ書ければ、公正証書遺言か秘密証書遺言なら、作成することができます(※公正証書遺言の場合は、遺言者が署名できないときは、公証人がその事由を書いて署名に代えることもできます)。自筆証書遺言の場合は、自書すなわち本人の筆跡であるかどうかが問題となります。「本人の筆跡ではない」と疑われそうな場合、相続人等から無効を主張される可能性もあります。 Q5.
自筆証書遺言を書いておきたいと思います。字を書くときに、人の手を借りることは可能でしょうか? 自筆証書遺言は、人の手を借りて書くことは可能ですが、問題もあります。 【解説】 自筆証書遺言は「自書」でなければなりません。「自書」とは、筆跡により遺言者本人が書いたものであることが判定でき、また、それゆえ、その遺言が遺言者の真意に出たものであると考えられるためです。 そこで、「自書」の要件については、厳格に解されていて、次のような判例があります。 『運筆について他人の添え手による補助を受けてされた自筆証書遺言が民法九六八条一項(自筆証書遺言)にいう「自書」の要件を充たすためには、遺言者が証書作成時に自書能力を有し、かつ、右補助が遺言者の手を用紙の正しい位置に導くにとどまるか、遺言者の手の動きが遺言者の望みにまかされていて単に筆記を容易にするための支えを借りたにとどまるなど添え手をした他人の意思が運筆に介入した形跡のないことが筆跡のうえで判定できることを要する』(最高裁昭和62年10月8日第一小法廷判決要旨そのまま) このように、自筆証書遺言は人の手を借りて書くことは可能です。ただし、「自書」の要件を満たすことは難しい場合もあるので、公正証書遺言になさる方が良いと思います。 Q6.
自筆証書遺言は、記載の間違いがあった場合、どのように直したらよいのでしょうか? 民法に定められている訂正方法は、次のとおりです。 訂正方法: @ 遺言者はその場所を指示し A その部分の記載を変更したことを書いて、署名し B かつ、その変更箇所に押印しなければならない。 具体的には、 @ 元の字が読めるように、訂正部分に線を引いて抹消して、押印する A 正しい記載を余白部分に記載し、 B 訂正する部分がある行の先頭部分(左)に「本行○字削除 ○字加入」と記載し、署名する 【訂正の一例】 遺言の内容の重要な部分について誤りがあった場合は、手間でも書き直した方がよいでしょう。その際には、書き損じた遺言書は必ず破棄してください。 ※単なる誤記の訂正については、次の判例があります。 「自筆証書遺言における証書の記載自体からみて明らかな誤記の訂正については、民法九六八条二項所定の方式の違背があっても、その違背は、遺言の効力に影響を及ぼさない」(最高裁昭和56年12月18日第二小法廷判決要旨) Q7.
父は成年被後見人です。医師の立ち会いの下に遺言ができるそうですが、どのようにしたらよいでしょう? 医師二人以上の立ち会いのもと、「事理を弁識する能力を一時回復した時において」例外的に遺言をすることが認めてられています 【解説】 遺言は、満15歳以上であれば誰でもできます(民961)。ただし、遺言者は、遺言をする時においてその能力を有しなければなりません(民963)。 遺言をするときの能力とは、「意思能力」を指し、遺言にあてはめると、「遺言の内容を理解して、結果がどうなるかわかる」ことが必要です。 成年被後見人は、「精神上の障害により事理を弁識する能力を欠く常況にある者」とされています。そこで、「事理を弁識する能力を一時回復した時において」例外的に遺言をすることを認めています(民973)。したがって、遺言をするときには、医師二人以上の立ち会いがなければなりません。立ち会った医師は、遺言者が遺言をする時において精神上の障害により事理を弁識する能力を欠く状態になかった旨を遺言書に付記して、これに署名し、印を押します(民973)。 Q8.
遺言を書こうと思います。遺言執行者を指定した方がよいでしょうか? 遺言を確実に執行したい場合は、遺言執行者を指定しておいたほうがよいでしょう。 【解説】 遺言を書いても執行されなければ、意味がありません。遺言を執行するのは、遺言執行者の指定がなければ相続人の役目ですが、遺言執行者が指定されていれば、遺言執行者が行います。また、遺言執行者が指定されていない場合でも、相続人や利害関係人が家庭裁判所に申し立てて、遺言執行者を選任してもらうこともできます。 遺言執行者しかできない遺言事項は、子の認知と推定相続人の廃除またはその取消ですが、それ以外の遺言事項も遺言執行者がいれば、遺言を実現するために必要な一切の行為をする権限を有しているので、遺言執行に必要な事務(目的物の引渡し、財産の管理・処分、登記等)を行ってくれます。 遺言内容は、相続人にとって必ずしも受け入れられることばかりではないので、相続人の協力を望めない場合もあります。遺言執行者がいる場合は、相続人は相続財産の処分その他遺言執行を妨げる行為をすることができない(民1013)ので、遺言を確実に執行したい場合は、遺言執行者を指定しておきます。 また、遺言執行者に指定された人は、その就任を拒むことができます。そこで、遺言執行者に指定したい人がいる場合は、事前にその旨の了解を取っておいた方がよいでしょう。 Q9.
遺言を書きましたが、書いた時と事情が変わり、書き直したいと思います。どうすればよいでしょうか? 遺言を書いた後、気持ちが変わることもあれば、資産の価値も年月と共に変わってきます。そこで、「遺言者は、いつでも、遺言の方式にしたがって、その遺言の全部又は一部を撤回することができる」(民1022)とされています。つまり、遺言の方式に従い(自筆証書、公正証書、秘密証書等)、先に書いた遺言を撤回することができます。公正証書遺言を自筆証書遺言で撤回することもでき、遺言の方式はすべて利用できます。そして、この撤回とは、「効果を消滅させる」という意味です。 【解説】 遺言は、遺言者の意思が書面に記されたものですが、いつも「遺言書」と表題があるわけではありません。いずれの方式の遺言でも、1通書いて、その1通だけが遺言者の死後に遺っていたら、その遺言が最終の意思となりますが、遺言が複数存在した場合、最後に書いたものだけが遺言者の意思であるとは限りません。遺言はその内容が抵触していなければ、日付に関係なく、存在するすべての遺言が遺言者の意思になります。 ご質問のように、遺言の内容を変えたい或いは遺言を遺すのをやめたい場合は、次のような方法ですることができます。 1.自筆証書遺言の場合 ・ 新たに遺言を書き、前に書いた遺言を確実に破棄しておけばよいでしょう。 ※確実に破棄するとは、読める部分がなくなる状態にすることです。 ・ 「前の遺言を撤回する」旨の新たな遺言書を書けば、前に書いた遺言は撤回されます。 ・ 前の遺言の一部だけを撤回する内容の新しい遺言書を書くこともできます。 2.公正証書遺言の場合 公正証書遺言は原本が公証役場に保管されているため、遺言者が持っている公正証書遺言(正本や謄本)を破棄しても遺言を撤回したことにはなりません。 公正証書遺言を撤回するには、新たな遺言を作成して、前の遺言を撤回する必要があります。この場合、前の公正証書遺言を撤回するための新たな遺言は自筆証書遺言・公正証書遺言・秘密証書遺言のいずれでも構いません。なるべくなら公正証書遺言をお薦めします。 というのは、自筆証書遺言では死後に遺言書が発見されないこともあるからです。 そして、上記のような方法で撤回された遺言は、その撤回行為が撤回されたり、取り消されたり、または効力が生じなくなるに至ったときであっても、その効力は回復しません。つまり、撤回されたら遺言の効力は、原則、回復しません。「撤回の撤回」や「撤回の取消」となると、遺言者の真意がわからなくなるおそれがあるからです。 また、民法では遺言を撤回したとみなされる行為を次のとおりに規定しています。
※複数の遺言書の先後や遺言と撤回行為の先後は、遺言書に書かれた「日付」が決め手になります。 Q10.
自筆証書遺言を見つけました。遺言の検認について教えてください。 公正証書遺言以外は、家庭裁判所の検認を受けなければなりません。検認とは、遺言書があり(遺言書の存在)、そこに書かれている内容を検証するものです。それは、後日、遺言書を紛失したり、遺言内容が改竄されることを防ぐことにあります。 遺言を発見した相続人や遺言の保管者は、遺言者の死後に遅滞なく家庭裁判所に「遺言書の検認」の審判申立をしなければなりません。申立をすると、家庭裁判所は申立人および各相続人に対して、遺言の検認をする日を通知します。申立人および相続人は、通知された日に立ち会うことができるか否かを裁判所に回答します。検認当日、封印されている遺言は審判官が開封し、自筆証書遺言の場合は「本人の筆跡であるかどうか」を問われます。内容を検証後、遺言書に検認されたことの証明書がなされます。 検認手続については当サイトの「自筆証書遺言について」の中の「自筆証書遺言の家裁への検認手続について」をご覧下さい。 Q11.
現在、外国に住んでいます。日本に土地/建物もあり、遺言を書いておこうと思います。どのようにしたらよいですか? 日本国籍を有していれば、日本にある土地や建物の相続については日本の法律が適用されます(法の適用に関する通則法36条)。 そこで、自筆証書遺言なら民法に従い、遺言の全文、日付、署名を自書します。公証人が関与して作成する公正証書遺言や秘密証書遺言の場合、公証人の代わりにその役目を領事が行う(民984)ことになります。現地の日本領事館に行って手続をすることになります。 |