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成年後見の基礎知識
 




 


 
Q1.
母に対し、補助の申立をしたいと思います。補助申立についての「本人の同意」について教えてください

 
法定後見制度は、判断能力の程度に応じて、後見・保佐・補助と3つの類型に分けて、それぞれに援助する人(後見人、保佐人、補助人)を通して、本人を支援するものです。

補助の対象となる方は、「精神上の障害により事理を弁識する能力が不十分である者」(民15@)です。つまり、判断能力が不十分で、自分の財産を管理したり処分するには援助が必要な場合がある人で、重要な財産に関わる行為(民13条1項)、たとえば、不動産の売却等の行為について、本人が自分でできるかもしれないが、本人のためには、誰かのアドバイスを受けたり、代わってやってもらったほうがよいという程度の人です。

したがって、後見や保佐と違って(※注)、補助開始の申立だけでは自動的に補助人に同意権や代理権が付与されるわけではありません。あくまでも支援が必要な行為を選んで、その行為についてのみ補助人に同意権や代理権が付与されます。

そこで、申立手続については、次のとおりの手続が考えられます。本人が申し立てるか、或いは本人以外の人が申し立てる場合は本人の同意が必要になります。同意権や代理権の付与についても、同様です。

@補助開始の申立 + 同意権の付与申立
A補助開始の申立 + 代理権付与の申立
B補助開始の申立 + 同意権の付与申立 +代理権付与の申立
※ 同意権や代理権の内容については、「成年後見の基礎知識」をご参照下さい。

本人以外の人が申し立てた場合の「本人の同意」は、申立時のみならず、家庭裁判所の調査官が本人と面接した際や、必要に応じて、審判官(裁判官)が事情を尋ねる(尋問)等で確認します。

(※注)後見の場合は「後見開始の申立」をすると、後見人が選任されて、選任後は日常に関する行為以外は、すべて本人に代わり後見人がすることになります。
保佐の場合は、「保佐開始の申立」をすると、保佐人が選任されて、重要な財産に関わる行為(民13条1項)には保佐人の同意が必ず必要になります。申立により、更にその他の法律行為に「代理権」を付与することができます。



 
Q2.
母はひとり暮らしです。訪問販売により必要もない商品を買っているようです。どうしたらよいでしょうか?

 
訪問販売による購入品については、クーリングオフという制度を利用すれば、購入後の一定期間内なら理由を問わずに契約の解除ができます。

ただ、ひとり暮らしをされているなら、日常の行為をいつも見守っているわけにはいかないでしょう。したがって、お母様の判断能力が不十分で、必要がないのに同じ品物をいくつも買ってしまうような場合には、「補助開始」を検討された方がよいでしょう。

「補助開始」の申立と同時に、補助人に「同意権」を付与してもらいます。「同意権」が付与された法律行為については、補助人の同意がなければ契約を取り消すことができます。ご相談の場合は、「金20万円以上の物品の購入については、補助人の同意を得なければならない」という審判を得れば、補助人が同意していない20万円を超える物品の購入契約は取り消すことができます。

このように必要に応じて、補助人に「同意権」や「代理権」を付与してもらえば、被補助人の利益を守ることができます。「同意権」や「代理権」については「成年後見の基礎知識」をご参照下さい。



 
Q3.
後見の申立をしようと思います。保佐か後見のどちらにすればよいかわかりません

 
申立をするときには、申立人が医師の診断書をもとに、後見か保佐かを判断することになります。

家庭裁判所に申立をすると、家庭裁判所は、後見や保佐の場合は原則、鑑定をします。その鑑定結果により申立とは異なる類型と判断された場合は、「申立の趣旨の変更」という手続をとれば、類型に合わせた申立を新たにする必要はありません。

医師はご本人のかかりつけの病院の医師で構いません。この申立に必要な診断書(成年後見用)は医学的診断のほかに判断能力判定についての意見が求められ、以下のような様式になっています。

          
                   診断書(成年後見用)

1.氏名                     生年月日
  住所

2.医学的診断
  診断名

  所見(現病歴、現在症、重症度、現在の精神状態と関連する既往症・合併症など)

           (該当する場合にチェック □遷延性意識障害  □重篤な意識障害)


3.判断能力についての意見(下記のいずれかにチェックしてください)
  □ 自己の財産を管理・処分することができない。(後見相当)
  □ 自己の財産を管理・処分するには、常に援助が必要である。(保佐相当)
  □ 自己の財産を管理・処分するには、援助が必要な場合がある。(補助相当)
  □ 自己の財産を単独で管理・処分することができる。

  判定の根拠
  (1) 見当識
     □障害がない  □まれに障害が見られる  □障害が見られる時がある □障害が高度
  (2) 他人との意思疎通
     □できる      □できないときもある      □できないときが多い     □できない
  (3) 社会的手続や公共施設の利用(銀行等との取引、要介護申請、鉄道やバスの利用など)
     □できる      □できないときもある      □できないときが多い     □できない
  (4) 記憶力
     □問題がない  □問題があるが程度は軽い □問題があり程度は重い □問題が顕著
  (5) 脳の萎縮
     □ない       □部分的に見られる      □著しい           □不明
  (6) 各種検査
     ・長谷川式認知症スケール (□  点[ 月 日実施]  □未実施  □実施不可)
     ・MMSE             (□  点[ 月 日実施]  □未実施  □実施不可)
     ・その他の検査
  (7) その他特記事項

備考(本人以外の情報提供者など)

 
 



 
Q4.
亡父の遺産分割協議をするにあたり、母が認知症のため後見人を付けなければなりません。娘の私が後見人になるつもりでいますが、注意することは何でしょうか?また、遺産分割協議が終われば、後見人は辞任することができますか?

 
ご質問の場合、遺産分割協議に参加する相続人は、配偶者と子全員となります。
したがって、ご相談者とお母様は遺産分割協議の当事者となります。ご相談者は自分の権利を行使すると同時に、後見人としてお母様の権利を行使することになります。このような場合は利益相反行為といって、新たにお母様の権利を守る人(特別代理人)を家庭裁判所で選任してもらい、その人が遺産分割協議に参加することになります。

そこで、家庭裁判所に特別代理人を選任してもらうか、或いは後見開始の申立時に、申立のきっかけになった事由として「遺産分割協議をするため」とした場合、家庭裁判所は職権で成年後見監督人を選任することがあります。成年後見監督人がいる場合は、成年後見監督人がお母様に代わり、遺産分割協議に参加します。

特別代理人の選任を申し立てる際に、特別代理人を交えて協議をした遺産分割協議書案を家庭裁判所に提出します。特別代理人には遺産分割協議には関わらない親族の方になってもらうことができます。また、成年後見監督人が選任されている場合は、成年後見監督人は遺産分割協議の結果を家庭裁判所に報告します。

成年後見人の仕事は、成年被後見人が死亡するまで続き、正当な事由がない限り、辞任することができません。辞任する場合には家庭裁判所の許可が必要になります。そこで、成年後見人の仕事が全うできるかどうかもよく考えて、決断してください。ただし、申立時に後見人候補者としてご自分を記載していても、家庭裁判所はさまざまな事情を考慮して成年後見人を選任するので、必ずしも候補者が成年後見人に選任されるとは限りません。



 
Q5.
父は現在、有料老人ホームに入所していますが、今後の施設利用料や介護に伴う費用を捻出するために、自宅売却を考えています。父は認知症で、今後は自宅で生活することはできません。自宅を売却するには、成年後見人を立てなければならないそうです。手続も併せて教えてください

 
【成年後見人等の申立について】
法定後見の類型のいずれかを申立てる場合、その類型については申立人が判断します。その判断については、医師の診断書が元になります(Q3参照)。判断能力を診断する医師は、普段、病気の際に診療してもらっている主治医でも構いません。

さて、診断書を元に申立をすると保佐や後見の場合は原則鑑定が必要になり、最終的には家庭裁判所の判断により類型が決まります。後見の場合は、後見人が成年被後見人に代わって日常生活に関する法律行為以外の全ての法律行為の代理をすることになります。保佐の場合は不動産のような重要な財産の売却には自動的に同意権が付与されますが、必要に応じて不動産の売却等について代理権の付与の申立を行います。

【ご自宅の売却について−居住用不動産の処分】
1.後見の場合
居住用不動産の売却については、家庭裁判所の許可が必要になります。

2.保佐の場合
・不動産その他重要な財産に関する権利の得喪を目的とする行為をするには、保佐人の同意が必要になります。
・本人所有の不動産の処分について保佐人に代理権がある場合は、居住用不動産を処分(売却等)するときに、家庭裁判所の許可が必要になります。

ご自宅は本人にとって精神的な影響が大きいと考えられているため、その売却に際しては後見人等の権限にも制限を加えており、売却する際には家庭裁判所の許可(「居住用不動産処分の許可」)が必要になります。

「居住の用に供する」不動産とは、本人が自宅として居住してきた土地や建物で、現在は住んでいなくても「居住用不動産」となります。したがって、ご相談者の場合も、お父様は現在、有料老人ホームに入所していて、今後、自宅に戻ることがないとしても、売却する際には家庭裁判所の許可が必要になります。

「後見等開始の申立」や「居住用不動産処分の許可」については、成年後見の基礎知識をご参照下さい。



 
Q6.
父は最近、認知症が進みました(後見相当)。父と同居している兄が、父のお金を使っているようです。そこで、成年後見制度を利用したいと思います。

 
成年後見制度の趣旨は、判断能力の衰えた人を援助する人(後見人、保佐人、補助人)を通して支援するものです。被後見人に該当する人とは、「精神上の障害により事理を弁識する能力を欠く常況にある人」(民7)で、自分の財産を管理したり、処分したりできないほど判断能力がなく、日常的な買い物も自分ではできない程度の人です。

そこで、成年後見人は本人の意思を尊重して、心身の状態と生活の状況に配慮して(身上配慮義務)、財産管理と生活や療養看護の事務を行います。財産の管理とは、本人の財産の保存と維持等が主な事務で、具体的には現金・預貯金・有価証券等を管理し、本人の生活や療養に関する契約やその支払い、賃貸している不動産があれば賃料の管理などをします。したがって、後見開始の申立をして、成年後見人が選任されれば、その後は成年後見人がお父様の財産を管理することになるので、親族の勝手なお金の流用は許されなくなります。



 
Q7.
知的障害を持つ未成年の子がいます。将来に備えて後見制度の利用を考えています。

 
親がしっかりしているときは、親が子の世話ができますが、親の判断能力が衰えたり、親が亡くなった後の子の将来は心配が尽きないことと思います。子を支援する人が必要になるのは明らかです。

そこで、まず、親が任意後見契約を結び、自分の判断能力が衰えてきたときに任意後見契約を発効させて、その契約の中に「子の後見開始の申立をすること」を代理権の中に入れておきます(法定後見を開始する)。親の任意後見受任者(任意後見人になってもらう人)に子の後見についても併せて相談して、場合によっては複数の人(財産管理と身上看護を別の人にお願いする)を後見人に選任してもらうよう申立をお願いしておくのも良いかと思います。

お子さんが複数人いる場合は、遺言をしておかないと相続人同士での遺産分割協議となります。遺言を有効に利用して、知的障害を持つお子さんに生活に必要な財産を残してあげることができます。

以上はほんの一例にすぎません。お子さんが複数人いる場合に、兄弟の助けを借りることができるか、財産はどのくらいでどのような資産があるか、どのような後見が子にとって適しているかは個別の事案になります。いずれにしろ、後見制度は心強い見方になります。



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