2.遺言でできること


民法に定められた方式に従えば、遺言にどのようなことを書くかは自由です。ただし、法律上の効力を持つのは「法律で規定された事項」に限られます。

遺言に書かれていることの実現を法的に保障する以上、遺言の内容は法的に強制可能なものになるとともに、遺言者の一方的な意思なので、できることも限定されています。

■ 遺言でできる行為
身分に関すること
  1. 認知
    非嫡出子(婚姻外にできた子ども)を自分の子とし、法的親子関係を生じさせることです。
  2. 未成年後見人の指定、後見監督人の指定
    未成年者に親権者がいない等の場合、未成年者の後見人や後見監督人を指定できます。
相続に関すること
  1. 推定相続人の廃除および廃除の取消
    被相続人に対し、虐待、侮辱、非行等の著しい行為をした推定相続人から相続人の資格を奪うことが「廃除」です。また、被相続人が生前にした「廃除」を取り消すことができます。
  2. 相続分の指定または指定の委託
    法定相続分以外の相続分を指定できます。また、その指定を誰かに委ねることです。
  3. 特別受益の持戻の免除
    生前贈与(特別受益)は、相続開始時に相続財産に加え(持戻)ますが、それを免除することです。
  4. 遺産分割方法の指定または指定の委託
    具体的に財産の配分を指定することとその指定を誰かに委ねることです。
  5. 5年以内の遺産分割の禁止
    5年間は遺産分割を禁止することができます。
  6. 相続人相互の担保責任の指定
    取得した相続財産に欠陥があった場合、相続人間で価値の減額分を補い合うことです。担保責任についてもどの相続人がどれだけ負担するかを指定できます。
  7. 遺留分減殺方法の指定
    遺贈の減殺割合について、指定することができます。
財産の処分に関すること
  1. 遺贈
    遺言で財産を他人(相続人や法人を含む)に無償で与えることです。遺産を全部与えたり、遺産総額に対する割合で与えることを包括遺贈、特定の財産を与える特定遺贈、また、遺贈する代わりに義務を与える負担付遺贈等があります。
  2. 寄付行為
    財団法人を設立するために必要な寄付行為を行うことです。
  3. 信託の設定
    信託を設定できます。
その他
  1. 遺言執行者の指定または指定の委託
    遺言を実現してくれる遺言執行者を指定し、また、その指定を委託することです。
  2. 祭祀承継者の指定
    先祖の供養やお墓を守る人を指定できます。
この他に、生命保険金の受取人の指定や変更も可能です。

■ 付言事項について
「お母さんを大切にしてくれ」とか「兄弟仲良く暮らしてほしい」というようなことは付言事項といって、法的な拘束力はありませんが、遺族にとっては重要な意味を持ちます。また、相続人以外の人への遺贈、相続人の廃除、遺留分を侵害する遺言をした場合等には、何故、そのような遺言をしたかを記載した書面(たとえば「遺言理由書」など)や、「宣誓供述書」を別途作成しておくと、後々の争いを抑止する効果があります。
葬儀や納骨の仕方についての希望、献体の意思表示、死後事務の依頼などについては、遺言書の発見が遅れて希望が叶えられない場合もあるので、遺言書に記載してある旨を事前に伝えておくか、あるいは別のかたちで親族に伝えておくのが良いでしょう。

宣誓供述書について
宣誓認証を受けた文書を宣誓供述書といいます。宣誓認証制度は、公証人法58条ノ2の規定の新設により設けられた制度で(平成10年1月1日施行)、公証人が私署証書(作成者の署名、署名押印または記名押印のある私文書のこと)に認証を与える場合において、当事者がその面前で証書の記載が真実であることを宣誓した上、証書に署名若しくは押印し、または証書の署名若しくは押印を自認したときは、その旨を記載して認証する制度です。
公証人が、私文書について、作成の真正を認証するとともに、制裁の裏付けのある宣誓によって、その記載内容が真実、正確であることを作成者が表明した事実をも公証するものです。たとえば、推定相続人の廃除の遺言をした場合に、遺言者が排除の具体的な理由を宣誓供述書に残しておくことにより、後に訴訟等になった時には証拠となります。(日本公証人連合会HPより抜粋)

┣ 宣誓供述書の詳細についてはこちらの「公証事務〜Q&A〜の宣誓認証」をご覧ください



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