3.遺言を書いたほうがよい場合


誰でも相続のことで残された人たちが揉め事を起こさないことを願いますが、相続人には相続する権利があり、遺言がないと、譲りたい人にご自分の財産を贈ることがことができません。

親族間に問題やしこりを残さないように、遺言を書いておいたほうが良いと思われるのは、次のような場合です。

■ 子がいない夫婦
子がいない場合、配偶者と第二順位(直系尊属)の相続人、第二順位の相続人がいなければ配偶者と第三順位(兄弟姉妹)の相続人の間で相続財産を分けることになります。もし、相続財産に土地/建物と僅かな現金しかなく、配偶者以外の相続人が相続分を主張した場合、残された配偶者は土地や建物を処分しなければならなくなり、生活に困窮するおそれがあります。このようなことを回避するためには、遺言により「配偶者に全財産を相続させる」などとすれば、遺留分はありますが(兄弟姉妹にはありません)、より多くの財産を配偶者に残すことが可能です。
■ 相続権のない人に財産を譲りたい
  嫁、後順位の相続人、内縁の妻、世話になった知人等
息子が亡くなった後も、嫁が義父母と同居し面倒を看ても嫁には相続権がありません。また、兄弟姉妹、孫等は先順位の相続人がいれば相続権がありません。その他、内縁の妻や、何くれと世話をしてくれた知人も同様です。このような相続権のない人に財産を譲りたい場合には、遺言が有効です。
■ 子の将来に不安があるとき
子に知的あるいは精神障害があるときは、将来の子の生活を見越して財産を与えることができます。また、信託を設定し、子に定期的に金銭を与えることが可能です。
■ 相続人がいない場合
相続人がいないと遺産は最終的には国庫に帰属します。遺言をすれば、特定の人や団体に財産を譲ったり、寄付したりすることができるので、自ら築いた財産を有効に処分できます。
■ 家業の後継者を指定したいとき
家業を継ぐ者を決めて、経営の基盤になる動産や不動産を相続させることができます。
■ 相続人の間でトラブルが予想されるとき
相続分や遺産の分割方法を決めておけば、争いを回避できます。また、親の家業を報酬もとらずに手伝うなどした相続人がいた場合は、他の相続人より多めに財産を与えることができます。遺産分割協議において、寄与分はなかなか認められるものではないので、遺言をしておくとよいでしょう。
■ 認知していない子がいる場合
生前に認知できなかった子を認知して、相続権を与えることができます。
■ 認知した子がいる場合
認知した非嫡出子の法定相続分は、嫡出子の半分です。より多く相続させたい場合は、相続分の指定や遺産の分割方法を指定しておくことができます。

遺言はこのように遺言する人の思いを託すことができますが、遺留分を配慮することや遺言の内容を実現するための「遺言執行者」を指定することも忘れないようにしてください。



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