相続において誰が相続人(法定相続人とも呼ばれます)になるかは最も重要なことです。民法において、被相続人と一定の身分関係にある者(血縁関係者と配偶者)を相続人とし、その範囲と順位を定めています。相続人は、被相続人が死亡した時点で生存していなければなりません。 相続人の範囲とその順位は次のように定められています。
代襲相続 第一順位である子に次の理由がある場合に、孫や曾孫などの直系卑属がいれば、子に代わって相続人(代襲相続人)になります。 @ 相続開始以前に死亡したとき A 相続欠格によって相続権を失ったとき B 廃除によって相続権を失ったとき
■相続人のケース図 二重資格 相続人が、相続人として二重に資格を持つ場合は、二重の権利を有します。二重に資格を持つ場合とは、たとえば、被相続人が孫を養子にして、実子(孫の親)が死亡している場合です。実子が死亡しているため、孫は親の代襲相続人であると同時に養子として相続人になります。 同時死亡の推定 相続は、人の死亡により開始し、相続人は被相続人(死亡した人)が死亡した時点で、生存している人しかなれません。したがって、飛行機事故で親子同時に死亡状態であったような場合、どちらが先に死亡したか わかりません。このように死亡の前後が明らかでない場合は、同時に死亡したものと推定され、この親子間では相続が開始しないことになります。 親が現場で、子が病院に搬送されてから死亡したというように、死亡の前後が明らかな場合は、あとに死亡した子は親の相続をした後に、死亡したことになります。 同時死亡の推定と代襲相続 同時に死亡した者の間では相続は開始しませんが、死亡した者に直系卑属がいる場合は、代襲相続が発生します。代襲相続の要件である「被相続人の子が、相続の開始以前に死亡したとき」の"以前"という語句は、「同時に死亡した場合も含む」と解釈されています。 相続人とは 相続人とは、上記のとおり民法に定められて、法定相続人とも呼ばれています。相続人以外の人が遺言によって財産を譲り受ける場合は受遺者と言います。 相続分とは、各相続人が遺産全体に対して相続できる割合をいい、次の2つがあります。
■ 法定相続分(相続人の組み合わせにより、相続人各人の相続分が決められています)
※ 配偶者以外の相続人が複数いる場合 たとえば、配偶者と子が3人いる場合は、子の法定相続分である1/2を3人で等分したものがそれぞれの子の相続分になります。 ※ 配偶者がいない(死亡、離婚他)場合 相続財産のすべてを相続人で等分したものがそれぞれの相続分になります。 相続分の例外(非嫡出子)について 非嫡出子の相続分は嫡出子の半分でしたが、平成25年12月5日,民法の一部を改正する法律が成立し,嫡出でない子の相続分が嫡出子の相続分と同等になりました(同月11日公布・施行)。平成25年9月5日以後に開始した相続について適用することとしています。 相続人でありながら、相続人としての資格を失う場合があります。相続欠格者と廃除者です。また、自らの意思で相続人の資格を放棄した人は、当然ながら相続人にはなりません。 ※相続放棄については、「相続放棄と限定承認」の項をご覧ください。 ■ 相続欠格 被相続人の財産を相続させることが正義に反するような行為を、推定相続人(被相続人が死亡すれば、相続人になる人)が行った場合に、当然に相続資格を失います。 相続欠格に該当する行為は民法で次のように定められています。
■ 廃除 被相続人が相続させたくないと思うような非行が遺留分を有する推定相続人にあった場合、被相続人は家庭裁判所に申し立てて、その推定相続人の相続資格を奪うことができます。また、廃除は遺言によってもすることができます。なお、遺留分については、遺言・遺留分の項をご覧ください。
相続人が不明な場合とは、次の場合が考えられます。 @ 生きていることは間違いないが、住所不定で連絡がつかない場合 A 生死そのものが不明である場合 @ 生きていることは間違いないが、住所不定で連絡がつかない場合 音信不通等で連絡が取れない場合、民法上、その相続人は「不在者」として扱われます。そして、不在者である相続人に代わって家庭裁判所は財産管理人を選任します。その選任の手続の流れは次のようになります。
■ 不在者の財産管理人の職務 財産管理人の職務は、 不在者のために「財産の管理・保存」をすることです。したがって、財産管理人が遺産分割協議に参加する場合、家庭裁判所に 「権限外行為許可」の申立を行い、許可を得ておく必要があります。財産管理人がこの許可を申立てる際には不在者の法定相続分以上を確保した遺産分割協議書案を添付する必要があります。 裁判所
┣ 不在者財産管理人の選任申立手続について → 「不在者財産管理人選任」┗ 権限外行為許可の申立手続について → 「不在者の財産管理人の権限外行為許可の申立書」 A 生死そのものが不明である場合 生死そのものが不明な場合、利害関係人(不在者の配偶者、相続人にあたる者、財産管理人等)は不在者の従来の住所地を管轄する家庭裁判所に「失踪宣告」の申立をして、法律上死亡したとみなしてもらう手続をとることになり、その手続の流れは次のようになります。
失踪宣告の要件と効果(死亡日)は、次のとおりです。
裁判所
┗ 失踪宣告の申立手続について → 「失踪宣告」失踪宣告の申立は上記要件を満たすことが必要なので、生死不明と言っても、失踪宣告の要件を満たさない場合、「不在者」として相続を進めることになります。 相続人の不存在とは、次のどちらかです。 @ 戸籍上の相続人がいない場合 A 相続放棄をして、相続人が存在しなくなった場合 このような場合は、 1.相続財産は法人とされ、 2.家庭裁判所は相続財産の管理人を選任し、 3.相続財産管理人は相続財産に関する事務を執行します。 相続債務などを弁済した後、残余の相続財産は国庫に帰属します。ただし、特別縁故者がいた場合には、特別縁故者に相続財産の全部または一部が与えられます。
内縁の妻(夫)、事実上の養子、愛弟子、被相続人の財産形成に多額の出捐をした人や菩提寺、老人ホーム、宗教団体などに分与された例があります。 特別縁故者から相続財産分与の請求があった場合、家庭裁判所がさまざまな事情を考慮し、分与すべき財産を決めます。 裁判所
┗ 特別縁故者からの相続財産分与の請求 → 「特別縁故者に対する相続財産分与の申立書」 |