平成30年の相続・遺言に関する法改正について


高齢化社会が進み、相続開始時点での相続人(特に配偶者)の年齢が従前より高齢化していることによって、配偶者の生活を保障する必要性が指摘されてきました。また、要介護高齢者は増加しており、相続を取り巻く社会情勢にも変化が生じてきました。
 
そこで、民法の中で、相続に関するルールが見直され、この見直しは段階的に行われています。
 
この度の具体的な改正の主旨とその内容は以下の通りです。
 
 
1.残された配偶者の生活への配慮
 
(1)配偶者居住権の創設(2020年4月1日施行)
 
配偶者が相続開始時に被相続人所有の建物に居住していた場合に、配偶者は遺産分割において配偶者居住権を取得することにより、終身または一定の期間、その建物に無償で居住することができるようになりました。
 
 
(2)婚姻期間が20年以上の夫婦間の居住用不動産の贈与に関する優遇措置(2019年7月1日施行)
 
婚姻期間が20年以上の夫婦間で居住用不動産の遺贈や贈与がされた場合、今までは、遺産の先渡しを受けたものとして取り扱われていましたが、現在はその必要がなくなったため、配偶者はより多くの遺産を取得することができます。
 
 
 
2.遺言の利用を促進
 
(1)自筆証書遺言の方式の緩和(2019年1月13日施行)
 
今までは遺言書の全文を自書する必要がありましたが、今は財産目録をパソコンで作成する、通帳のコピーを添付するなど、自書によらない財産目録を添付することができるようになりました。(ただし、財産目録の各頁には署名と押印が必要です)
 
 
(2)法務局における自筆証書遺言の保管制度の創設(2020年7月10日施行)
 
自筆証書遺言の作成者は、法務大臣が指定する法務局に遺言の保管を申請することができます。
 
 
 
3.その他
 
(1)預貯金の払戻し制度の創設(2019年7月1日施行)
 
預貯金債権は遺産分割が終了していなくても、共同相続人が単独で払い戻しができましたが、平成28年12月19日最高裁大法定決定により、相続された預貯金債権は遺産分割の対象財産に含まれることとなり、葬儀費用の支払い等お金が必要になっても遺産分割が終了するまで、被相続人の預金は払い戻しができなくなりました。今回の改正により、一定額の払い戻し、仮払いが認められるようになりました。
 
@ 預貯金債権の一定割合(金額の上限あり※)については、家庭裁判所の判断を経なくても金融機関
  の窓口で払い戻しが受けられるようになりました。※1つの金融機関の払戻しの上限は150万円
  まで。
 
A 仮払いの必要性があると認められる時には、他の共同相続人の利益を害しない限り、家庭裁判所の
  判断により仮払いが認められることになりました。
 
 
(2)遺留分制度の見直し(2019年7月1日施行)
 
@ 遺留分を侵害された人は、遺贈や贈与を受けた人に対して、遺留分侵害額に相当する金銭の請求を
  することができます。
 
A 遺留分侵害額請求をされた人が金銭をすぐに準備できない場合には、裁判所に対して、支払いの猶予
  を求めることができます。
 
 
(3)特別の寄与の創設(2019年7月1日施行)
 
相続人以外の被相続人の親族で、無償により被相続人の療養監護等を行った場合は、相続人に対して金銭を請求することができます。




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